霜月兼太

寒くなってきましたがいかがお過ごしでしょうか。



最近の見聞きしたものからいくつか。



上原の悔し涙に何を見た (文春文庫PLUS)
宇佐美徹也「上原の悔し涙に何を見た (文春文庫PLUS)」。
 プロ野球の記録を徹底分析して興味深いデータを示す「記録の神様」による、比較的最近(2000年〜2002年)の文章を集めたもの。
 いつものように面白い文章で安心して読めます…。でも、この本のハイライトは解説代わりにつけられた高川武将のドキュメント「『記録の神』の嘆き」でしょう。これを読むとプロ野球の記録よりも宇佐美徹也自身のことに興味を惹かれていきます。この情念が「プロ野球記録大鑑」を作り上げたのか。

 子供のころから野球とその記録に取り付かれ、

 カードとサイコロでプレーする野球ゲームを考案した。カードは強打者と弱打者、好投手とそうでない投手に分け、サイコロの2度振りを活用して、併殺や盗塁、エンドラン……とより実戦に近づくよう複雑化させていく。友人を引き込み、セとパに分かれ実際と同じ試合数をこなし、日本シリーズも開催。”宇佐美リーグ”の結果は、打撃、投手成績のそれとほぼ同じ結果になった。ゲームを消化するのに1日3〜4時間はかかる。それから集計し記事を書き……大学受験は棒に振った。

 などという色川武大のような(?)青春を送るようになる。(というか、私も同じようなことやってた)
 その後、当時の記録の神様・山内以九士に弟子入りし、報知新聞からパリーグ記録部とプロ野球に関する記録のオーソリティとなってゆく。しかしプロ野球の「黄金時代」は過ぎ、(皮肉なことに宇佐美自身によって知られることになる)記録を更新するためだけの本道ではないやり方が横行することになる。福間や菊地原の登板数、衣笠の連続出場、宇野と掛布の敬遠合戦…。それに怒りを覚えた宇佐美は監督への手紙という形で抗議・阻止に出ようとする。

 そして結びの、

 一つつけ加えておくと、実は宇佐美の好きな記録は、その一歩手前で力尽きたものだ。9回2死で無安打無得点を打ち砕かれた投手は、計18人いる。それは無安打無得点を達成した投手より、はるかに少ない。

 今、宇佐美は、9回2死まで無安打無得点の場面に来ると、「打たれてくれないかなあ」と思うようになってしまった。

 宇佐美氏は、藤川の最多登板記録更新について、岡田監督に手紙を送ったのだろうか?そして、西口の完全試合からの被安打(これでノーヒットを含めると3度目の失敗)をどんな顔をして聞いたのだろうか?



ECD「PRIVATE LESSON vol.2」を聞く。
 日本で生まれたディスコミュージック(いわゆる「和物」)をミックスしたCD。
 岡崎広志や小林泉美、サーカスなどに加えて、安藤昇東てる美といったノンジャンルでの選曲。個人的には大野克夫「ミスターBON」(ボンカレーボールドのCMソング。あいつがあいつがやってきた〜♪)や田中真弓「忍豚レゲエ」(さすがの猿飛エンディング!一豚二豚三豚デブ〜♪…というかこれ久石譲の作曲なのか!)がツボに入りました。この幅広さが魅力です。
 あとジャケットの質感がとてもかっこいい。



「大きな悩み」からは脱したものの、案の定「小さな悩み」が思い出したかのように沸いてくる。まあそんなものでしょうね。



ではまた。