底抜け底抜け金原二郎が通る

うーむ、月イチの書き込みになってるなあ。「安穏族」かここは。あれは週1回だっけ。そんなことはどうでもいい。


川崎市市民ミュージアムまで「名取洋之助と日本工房」を見に行く。(追記・もう終わってますので注意)
 ドイツで報道写真家として名をあげて、第二次大戦前夜から「日本工房」の中心として「NIPPON」などの雑誌で対外宣伝を担った…という名取洋之助のことはまあ「栄光なき天才たち」で知ったというよくあるパターンなんですが、その全貌をまとめた展覧会でした。
 山名文夫河野鷹思亀倉雄策と戦後のデザインをリードした面々が集っていたわけですからデザインもすごいのですが、個人的には写真が面白かった。もちろん木村伊兵衛土門拳といった人たちの写真なんだからいいのも当たり前なんでしょうが、(宣伝ということを抜いても)戦前の写真のクオリティの高さに驚きました。もうちょっと写真集とか見たいよな。
 あとプロパガンダ雑誌「FRONT」のこともちょっと紹介してくれればな、とは思いました。あっちは分家した東方社の仕事なんですね。



壊れかた指南
筒井康隆「壊れかた指南」(ISBN:4163248404)を読む。
 7年ぶりとなるらしい筒井の短篇集。そのせいか「新潮」「文学界」と文芸二社の作品を中心にまとめたものになっています。どっちから出すかもめなかったのかしら。
 前半は夢とか狐とか狸とか「虚構」であることを前提とした作品群。何だかもやがかかったような読後感。
 ショートショート集を経て、後半は実際にあったかもしれない「スケッチ」という言葉を思い出す作品群。「逃げ道」の地に足のついた救われなさといったら。
 で、「耽読者の家」がやっぱり素晴らしい、というかうらやましい。読者家の父親が残した世界文学の名作の数々を働かないで読み耽る二人の男の話…筋は基本的にこれだけ。あとは世界文学についての薀蓄が詰め込まれています。これだけでひたすら読書欲(+仕事したくない欲)を沸き立たせる手練れの作りです。*1一種のポルノ小説みたいなものだ。
 全盛期のドタバタはもう戻らないかもしれないけど、やっぱりすごい手を使ってくるなあ。

*1:「CINEMAレベル9」(「夜のコント・冬のコント」所収)もただ映画を見たくなる名作。